ネコソギラジカル 上・中・下 | |||
西尾維新 | 講談社 | 384項×3 | 2004/11〜2005/11 |
‐青色サヴァンと戯言遣い‐から始まり、‐青色サヴァンと戯言遣い‐で終わったこの物語。 回を追う毎に、ミステリーからアクション、コメディ、SFホラー、ロマンスとどんどん取り込み、とうとうフィクション小説に成りました。 もちろんそれは、退勢したのではなく昇華したのです。 主人公や主要キャラはもとより、脇役、チョイ役ですら普通の人は一切登場しない世界。 遍く有象無象、全ての魑魅魍魎を丸ごと呑み込み、ただの青春エンタにしてしまうとは、見事。 ところで<戯言シリーズ>は、読み手を選ぶ作品なので、嫌いだという人もいるでしょう。 その要因は2つ。 1つは、あちこちでアクセント的に使われる、笑いのポイントとなる例え話。 マンガ〜科学にまで至り、元ネタを知らなければまるで分からないし、当然笑えない。 なのに、解説は絶無。 週刊少年ジャンプ系が多く、特に『ジョジョの奇妙な冒険』はスタンド編だけじゃなく、波紋編にまで遡る有様。 まあでも、こっちは単に運の問題。 もう1つは、読解力と同調力がそれなりに必要なこと。 主人公の名前すら明かしてくれない西尾維新、本筋も一歩一歩丁寧になんて進めてくれません、もうハショリまくり。 2、3歩スキップするのは常で、ときには9割ぶっ飛ばし。 スピーディーな展開どころか、まるでワープ。 ついて来れない読者は、到着地点で迷子です。 この物語を読み解くには、‘ぼく’に心と思考を同調させた上で、物語を俯瞰して見れる視点が必要になります。 もちろん、数多いキャラが立つ登場人物達の世界観を、整理し記憶してないといけません。 この力量が有るか無いかが、面白かったか詰らなかったか、の差でしょう。 まあ単に、キレたキャラの奇矯な会話が好きなだけの変人フリークもいるでしょうが…。 語られなかった部分は自分で補うんです。 それは作者の考えている内容とは違うかも知れません。 でも、 だからこそ、自分の物語となるのです それだからこそ、忘れられない想い出となるのです。 あなたは“ぼく”になれましたか。 私は清々しく本を閉じれました。 これが先へと続く世界の終わりです。 さて、幾つか思いつくままネタばれ解説をしておくと。 ●石丸小唄さんが「零崎一賊、どうやら全滅しています」と報告しているが、少なくとも3人(?)は生きている。 ‘零崎人識’と‘零崎舞織’は確実、あとはたぶん‘零崎軋識’。 ≪愚神礼賛≫零崎軋識は、玖渚友の<チーム>の一人≪街≫式岸軋騎と同一人物。 人識がチームの連中と話した後で「共通の知合いが居たんもんでな」と言ってることから、この「知合い」が軋識だと推測します。 ちなみに、人識がいう昔共同戦線を張った「あの女」は、きっと≪ジグザク≫市井遊馬、「あいつ」「妹」が舞織。 ただし、この殺人鬼達は、もう人殺しをしないので、小唄さんの言葉も正しい。 ●‘西東天’は、もちろん生きている。 潤の「親父がまた――何か、するつもりらしいぜ」のセリフ、これは‘いーちゃん’の新たな敵という意味ではなく、そのまんま≪砂漠の狐≫西東天のことだと思う。 ≪赤き征裁≫哀川潤が親父と呼ぶのは、西東天だけだろう。 いーちゃんも「一生付き合うって、決めましたから」、「話し合いで、解決しよう」と言ってるし。 ●「ドッペルゲンガーの猫殺し」 物理学者シュレーディンガーが行った思考実験「シュレーディンガーの猫」と、 ある人物と瓜二つな霊的生き写し「ドッペルゲンガー」をかけた言葉。 この場合、‘千賀あかり’か‘千賀ひかり’かを確認するには話しかけるしかない、という意味。 ●パープルヘイズ 『ジョジョの奇妙な冒険』第五部に登場する‘パンナコッタ・フーゴ’のスタンド。 肉体の代謝機能を破壊するウイルスを感染させる能力。 ●マン・イン・ザ・ミラー 『ジョジョの奇妙な冒険』第五部に登場する‘イルーゾォ’のスタンド 。 鏡を出入口として、現実世界の全ての物質が左右逆の[鏡の中の世界]に引き込む能力。 ●幻影旅団 『HUNTER×HUNTER』に登場する念能力盗賊集団。 構成人数は13名。 ●GUNG-HO-GUNS 『TRYGUN』に登場する異能力殺人集団。 構成人数は13名。 ●完全生物(究極生物) 『ジョジョの奇妙な冒険』第二部に登場する≪吸血鬼≫カーズが、[エイジャの赤石]によって成った最終形態。 最後に、女子高生に名詞を渡した‘リンクス’についての考察を。 ここで登場するハンドルネーム‘リンクス’は、友がいうところの子猫でも、子狐の想影真心でも、狐の西東天でもなく、おそらく、たぶん、きっと‘病院坂黒猫’でしょう。 (西尾維新『きみとぼくの壊れた世界』の登場人物・探偵役) 根拠は「リンクス」≒「黒猫」、女子高生の名前「本名朝日」≒「櫃内夜月(非通知 夜 月)」、学校の名前「桜葉高校」≒「桜桃院学園」の符合。 さらに、『きみぼく』の語り部‘櫃内様刻’の名前は、偶然(?)にも‘いーちゃん’の本名当て条件に一致します。 櫃内様刻「ひつうち さまとき」( 「HITUUTI SAMATOKI」母音八、子音七、総数134 訓令式) これらが意味無しってことはないでしょう。 上・中・下巻のページ数も全て合わせるような、こだわりを見せてるんですから。 ただし、同一世界ではなく、パラレルワールドって設定でしょうね。 そういう意味では、‘病院坂黒猫’役になるのかな。 さてさて、もし、「そんな事柄は全部理解出来てる、それでもあの終り方は納得いかん」と、お怒りの方がおられるなら、その優秀な同調力で想像してみて下さい。 目の前に、≪人類最強の赤色≫哀川潤がドンと立ってます。 そして、あなたに向かってこう言います。 「王道で行こうぜ、王道で。そんなことで奇ィ衒ってどうすんだよ。 普通に終わらそう、普通でいいんだよ。何事も普通が一番だ。 てめえみてえな不幸な奴と玖渚ちんみていなかわいそうな奴とのおいまいなんだぜ――」 「――ハッピーエンド以外は認めねえっつーの」 どうです? 「うん、ハッピーエンドで良かった」と思えたでしょ。 =おまけ考察= 結局公表されなかった‘いーちゃん’の本名について。 (『クビツリ』での本名当て考察は、こちら) 友のセリフ「霞丘道児 ここでの「読んだ」は、「性質を見抜いた」という意味か、字面通り「‘戯言遣い’と読める」のか。 その後の会話から、前者の方が色濃いけど、西尾維新自身が「クビツリのヒントだけで本名が分かったら天才かもしれません」と言ってるので、本名当ての新たなヒントだと思いたい。 それと、西東天が‘いーちゃん’の名前を「……XXXXX ‘戯言遣い’と「読める」を真に受けて考えてみると、そのままの漢字ではなく、見様によっては、組み合わせると、だと思われる。 そこで‘戯言遣い’を分解すると、 戯 → 「虚」「戈」 言 → 「言」 (そのまま) 遣 → 「之」「?」 (しんにょうを除くと漢字として成立しない) 「遣」に似た字として、「遺」「之+貴」「之+口+官」「之+中+一+目」等は、やりすぎ感があるな。 「使」は考慮するべきか…「使」「丁+吏」 あまり裾を広げると候補が増えすぎるので、上4つで考えてみる。 ‘虚戈言遣’‘虚戈言遣い’ 「い」は無視したいところだが、‘いーちゃん’だし、名前の一部が平仮名の人はいるし、「い or ゐ」として補欠に入れる。 さて、読み仮名。 シリーズに登場するキャラ達の名前は、ぶっ飛んでこそいるものの、漢字の読み仮名としては、無理がないものばかり。 そこで、4つの漢字について漢和辞典で調べてみると、 「虚」…キョ、コ、ウロ、ウツロ、ウツケ、カラ、ソラ、ウソ、ムナ、ムナシ、トミテ 「戈」…カ、クワ、ゴ、ホコ 「言」…イ、コト、コトバ、ゲン、ゴン、ギン、ワレ、ココニ、イウココロ 「遣」…ツカ、ツカイ、ツカワ、ケン、ヤ、ヤリ、ヤライ、シム 多いなあ。 これらの組合せで、総和134になるパターンは、27種類。 その中から、母音8、子音7にも合致するのは、5種類。 ‘虚戈言遣’では、 『SORA KUWA I TSUKAI』(ヘボン式) 『MUNA KUWA I TSUKAI』(ヘボン式) ‘虚戈言遣い’では、 『KARA KA GEN TUKAI I』(訓令式) 『KO HOKO GON TUKAI I』(訓令式) 『KU KUWA I TSUKAWA I』(ヘボン式) (上記2つも『SORA KUWA I TSUKA I』とすればこちらにも入る) このままだと、いくらなんでも人の名前じゃないな。 この並びが美しいが、組み合わせて読める、のなら順序が変わってもいい。 4文字のアナグラムは、4!=24通り。 5文字のアナグラムは、5!=120通り。 数の計算じゃなく、人の名前っぽいかどうかの判断なので、実際に全部の組合せを試す必要があるのか………無謀、断念、挫折。 パッと見でも、それらしい組合せは思い付かないし。 途中で気が付いたけど、「戯」を分解して「虚」と「戈」にし、それらを繋げるという表示も込めて、 ‘虚十戈言遣’ もありかな。 この場合は順序通りじゃないと無理があるけど。 読み仮名は…あぁ、もう放棄です。 |
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